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天ケ瀬ダム
宇治市に位置する天ヶ瀬ダムは、京都府宇治市に建設された唯一のダムで、一級河川・淀川本川
中流部に位置している。国土交通省近畿地方整備局が管理し、西日本屈指の大河川である淀川
本流に構築されたこのダムは、高さ 73.0 メートルのアーチ式コンクリートダムで、国内最大級のトン
ネル放水路を備えている。
天ヶ瀬ダムは淀川での治水能力向上や宇治市への上水道供給、水力発電を目的とした特定多目
的ダムとして機能している。観光案内や管理事務所の説明ではダム湖である鳳凰湖は、平等院鳳
凰堂などと同じ琵琶湖国定公園エリアにあって、宇治地域の主要な観光地として親しまれているそ
うだが、私が訪れた際は夕方だったためか特に観光客らしき人は見受けられなかった。
ダムの設備として、特筆すべきは、ダム左岸に存在する国内最大級のトンネル放水路であり、毎秒
1500 ㎥に及ぶ放水量で効率的な貯水量コントロールが可能だ。これによって、宇治市街地や下流
域の大阪平野までを高い洪水調節機能で保護しているという。宇治市における文化財や歴史的建
造物への被害を最小限に抑えつつ、住民の安全と財産保護に寄与していると考えられる。
天ヶ瀬ダムはまた、貯水式水力発電を採用しており、ダム湖である鳳凰湖を下池として喜撰山ダム
が揚水発電を行っている。総発電出力は 59 万 8000 キロワットに達し、電力確保の面でも重要なダ
ムと言える。
上水道の面でも、宇治浄水場がダム湖から取水し、宇治市・城陽市・八幡市・久御山町に上水道を
供給している。これにより、大阪広域水道企業団が府内 42 市町村に供給する水道水の約 8 割を担
う村野浄水場と連携し、淀川の水量安定化による大阪府への上水道確保に貢献している。
天ヶ瀬ダムはその歴史的な沿革を辿ると、淀川水系改修基本計画の一環として建設され、淀川本
川に建設された唯一のダムとして位置づけられている。建設当初は直線型の重力式コンクリートダ
ムの計画であったが、コンクリート需要の逼迫を鑑みて、ドーム型アーチ式コンクリートダムに変更さ
れた。
ダム建設の背後には、淀川流域での水害が深刻化していた時期があり、特に 1953 年の台風 13 号
による宇治川の堤防決壊は大きな損害をもたらした。この経験から淀川水系改修が進み、天ヶ瀬ダ
ムが計画された経緯がある。
宇治市の中心部に近い都市型ダムであるため、平等院鳳凰堂や宇治橋、天ヶ瀬森林公園などが
至近距離にあって、僅かな時間ではあったが、1 年ぶりくらいに宇治市の観光をすることもできた。
ダム湖である鳳凰湖は紅葉の名所としても知られ、美しい景色に魅了された。
最近の進展としては、2013 年に「天ヶ瀬ダム再開発計画」が進行しており、治水・発電能力の向上
を目指してトンネル放水路の建設が行われた。2022 年には全長 617m の水路トンネルが完成し、国
内最大級の規模となっている。天ヶ瀬ダムは地域において、安全性や機能性の向上とともに、自然と
の調和を大切にしながら重要な役割を担っていると考えられる。
天ヶ瀬ダムの機能について、具体的にまとめると、主に三つの重要な役割が想定される。まず第一
に、洪水対策が挙げられる。例えば、台風や豪雨による大雨が予想される際、ダムは予備放流を行
い、ダム湖の水位を調整して洪水の発生を防ぐ。この際は計画高水量や下流域の流量ピークを考
慮し、適切な水位を維持することが重要だ。
次に、電力の発電が挙げられる。ダム下流の天ヶ瀬発電所は、最大使用水量を活かして最大
92,000kW の発電を行う。同時に上流に位置する喜撰山発電所では、ダム湖を下部調節池として最
大 466,000kW の純揚水式発電が行われる。これにより、地域の電力需要を支え、エネルギーの確
保に役立っている。
最後に、飲み水供給がある。宇治市、城陽市、八幡市、久御山町には、ダム湖から最大 0.3m3/s の上
水道用水が供給されている。これには暫定豊水利水も含まれ、約 36 万人分もの飲み水を確保して
いる。
緊急時には、これらの機能が調和して洪水から地域を守り、同時に電力供給や飲み水の確保に寄
与している。ダムは地域社会において欠かせない存在となっていることがわかった。
参考文献
https://www.kkr.mlit.go.jp/yodoto/amagase/
https://www.kkr.mlit.go.jp/yodoto/amagase/about/
https://www.kkr.mlit.go.jp/yodoto/amagase/about/yakuwari.html
https://travel.ujicci.or.jp/app/public/shop/index/58
http://www.suiryoku.com/gallery/kyoto/amagase/amagase.html
https://www.pref.kyoto.jp/koei/suidou_10.html
https://www.obayashi.co.jp/thinking/detail/project47.html
https://www.bosai.yomiuri.co.jp/biz/article/9698
1 月 31 日閲覧.
ならびに現地の碑文、案内板、解説プレート